4/24~5/13 SF情報

SF Signalの終了を受けて昨年5月に始めた海外SFリンクの収集だが、我ながら珍しく1年続いている(定期的にサボっているが)。誰が見ているわけでもないが、今後も可能な範囲で継続していきたい。

近刊情報

5月の新刊はぱっとしないが、Tor.comのSFノヴェラはチェックしてみるか。

オナー・ハリントン、エンダー、彷徨える艦隊など人気スペオペのスピンオフ短篇を集めたアンソロジー。商売上手。

噂のギブスンの来年の新作。ヒラリーが大統領戦で当選した世界を描くとか。

話だけは以前から流れていたアンディ・ウィアーの第2長篇が秋公開。既に映像化の話も動いているということだが、さてどうなるか。アーネスト・クラインとかセス・グレアム=スミスとか、一世を風靡したけれど失速していった作家の前例もあることだし。

サブテラニアンのウェブジンが終わってからだいぶ経つ気がするが、ベストアンソロジーが出るらしい。

荒巻義雄の『神聖代』英訳が出るそうな。この評では散々だが。

書評

インタビュー

4月末にともに新刊を出したドクトロウとヴァンダミアの対談。

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ストラーンのInfinityアンソロジーシリーズ、次のテーマは戦争SF。いよいよネタ切れの感。

その他記事

架空言語ジェネレーター。

ショーナン・マクガイアやJ・Y・ヤンの作品で、コピーエディタがノンバイナリーの登場人物の一人称theyをheに変えていた騒動のまとめ。作者の意図は守られるべきという話とは別に、非英語話者からするとthey使われるのはちょっと厄介だな……。

100年後のイギリスの健康をテーマにした短篇コンテスト。

2017年のヒューゴー賞ノヴェラ部門のノミネート作で作品のワード数との相関を調べたところ、27500~40000ワードの範囲内に収まったという結果。紙の雑誌掲載作は長くても25000ワード未満なので、一つもノミネートされなかったと。ヒューゴー賞を狙っている人は長めのノヴェラが狙い所ですぞ。

ディストピア小説を書いているエジプト作家のインタビュー。エジプトのSF(っぽい話)英訳はカイロ・アメリカン大学の出版がいくつか出しているようす。

プロメテウス賞というリバタリアン思想の観点からSFを表彰する賞がブログをはじめた。そのトップバッターがオープンソース創始者の1人エリック・レイモンドだったのでおやと思ったのだが、レイモンドはそもそも長年のSFファンでプロメテウス賞の審査員も務めていたのね。

4/10~22 SF情報

近刊情報

書評

インタビュー

賞関連

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その他記事

イーロン・マスクはイアン・M・バンクスの〈カルチャー〉から思想的影響を受けているという話。

英語圏SFの英訳の紹介。非英語圏SFはあまりジャンルSFっぽい匂いがしなくて(そこが魅力なのだろうが)個人的にはとっつきにくいのだが、この中ではスペインSFのMonteverdeは異星言語学者の話でちょっと面白そう。

3/27~4/7 SF情報

近刊情報

4月の新刊もあまりビビッとこないもの多し。ジョン・ジョゼフ・アダムズのアンソロジー買うくらいか。

オーウェルの向こうを張った未来予想アンソロジー。聞き覚えのない人含め、最近の作家が揃っている中でのクリストファー・プリーストの存在感。それにしても未来=ディストピアになってしまう時代なのが悲しい。

書評

インタビュー

アリエット・ドボダールのインタビュー。ここでは好きな/影響を受けたアニメとして「鋼の錬金術師」「黒執事」を挙げているが、ドボダールというとやはり「少女革命ウテナ」好きという印象が。Twitterアイコンも有栖川樹璃だし。

賞情報

アフリカSFの賞のノミネート。Amazonに売ってないのもあるな。

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その他記事

パリ第5大学の調査でジュール・ヴェルヌゆかりの地所からタイムカプセルが出土。なんか小説の冒頭部みたいな話だ。いや、ヴェルヌのものとはまだ確定してないんだけど。

3/13~25 SF情報

ベスト2016

近刊情報

ロシアのファンタジイの翻訳。なんかググると過去にも翻訳されているようだけど、ハーパーボイジャーが出すのでニュースになったのか。

現代ポーランドSFの巨人ヤツェク・ドゥカイの代表長篇Iceの英訳権が売れたという話。喜ばしいといえばそうだが、一体いつ出ることやら。どちらかといえば遠未来ものの方を訳してほしかった。

書評

 

 

 

 

 

 

インタビュー

その他記事

中国SFの記事。最近少し食傷気味。

スコルジーの新刊発売に、パピーズ陣営のヴォックス・デイがパクり長篇を出したところ、アマゾンから除外されたという話。表紙までそっくり真似て、まあしょうもない。 多少公平を期すなら、両陣営ともお互いを揶揄する本はこれまでも出してたんだけど、今回はアマゾン取り下げという手を使った(そして受諾された)ということで憤慨しているようだ。 普通に商売妨害する気満々なので、しょうがないのではという気がする。

『ステーション・イレブン』の作者のタイムトラベル短篇と、物理学者のタイムトラベルに関するコメント。

実在の作家(もしくはモデルになった人物)が登場するSF小説のリスト。って、P・K・ディックが登場するダリル・グレゴリイのPandemoniumが入ってないじゃん。やり直し。

2017年ヒューゴー賞エアノミネーション

魔が差して今年のワールドコンのメンバーシップ買っちゃったのだけど、ノミネーション可能な期間に間に合わなかった。せっかくなので小説関連の4部門について、ノミネーションした場合をシミュレートして書いてみる。

Novel

  • Ninefox Gambit by Yoon Ha Lee

Ninefox Gambit (Machineries of Empire Book 1) (English Edition)

Ninefox Gambit (Machineries of Empire Book 1) (English Edition)

長篇部門はユーン・ハー・リーの第1長篇。既に今年のネビュラ賞にもノミネートされているので、ある意味鉄板というか面白みに欠ける選択かもしれないが、前から知ってた作家のSF長篇が出ただけでもう感慨深い。最近は第1長篇はYAとかファンタジィとかそういうのが多いから……。

〈暦〉と呼ばれる儀式やシンボルの体系に支配された世界で、一兵士である主人公が汚名を着せられ、その挽回のために艦隊を率いて難攻不落の要塞の奪還を命じられる。助けとなるのは、数百年前に常勝の天才と謳われながら大虐殺を引き起こし、狂気に囚われたとして封印された将軍の精神体。この信頼できない指南役とともに、主人公は戦いに臨む。

作者の尊敬するO・S・カード作品を思わせる正統派戦争SFと見せかけつつ、はるかにウィアード路線というか、茫洋とした世界を詩的でグロテスクな文章で描いている。書評などみていると、そのいかにもエンタメな筋書きと実際の作品のミスマッチが低評価を招いている気がするが、個人的にはこういう作者の好きなもの――民族数学からTCGまで――のごった煮小説は嫌いになれない。というか、短篇の頃からずっとこういう作風である。作者がアニオタという観点からもう二言三言付け加えたいが、それはまた別の機会に。

古典的なSFということでいえば、エイドリアン・チャイコフスキーのChildren of Timeがベストだと思う。一応US版が2016年なのでノミネート資格はあるのだが、もう去年のクラーク賞取っちゃってるし、今さらという気もするのでナシということで。

Children of Time (English Edition)

Children of Time (English Edition)

Novella

  • “The Iron Tactician” by Alastair Reynolds

The Iron Tactician (English Edition)

The Iron Tactician (English Edition)

ノヴェラ部門、全然思いつかなかったので比較的最近読んだこれで。

人類宇宙を脅かす敵ハスカーに対抗する武器を探して、古代文明の遺した光速航行が可能な船に乗って人類宇宙を飛び出した主人公マーリン。機関の不調で立ち往生し、通りかかった故障ラムスクープ船から星図を失敬しようとしたところ、その船がかつて代替の機関を積んでいたことが分かり、手放したという星系に赴く。しかしそこは何世紀も続く星間戦争の真っ最中だった。

これを書きながら気付いたのだが、"Merlin’s Gun"(2000)のシリーズの一篇だったのね。何というほどのものもないが、もてなしのよいスペオペ

本当はTor.comがせっせと出しているノヴェラとかを挙げた方が通っぽいと思うが、特にピンとくるものがなく。その中では、アメリカ版カバネリという趣のガイ・ヘイリーの"The Emperor’s Railroad"(ポストアポカリプス+ゾンビ+列車+騎士)がちょっと面白かった気がする。

The Emperor's Railroad (The Dreaming Cities)

The Emperor's Railroad (The Dreaming Cities)

Novelette

  • “Flight from Ages” by Derek Künsken

ノヴェレット部門はデレク・カンスケン。全然メジャーではないが、〈アシモフ〉誌の常連の人である。キャラクターの書き方はややベタだが、SFアイデアを中核に据えた世界構築に才能を感じる。本作は作者がレナルズの「銀河北極」とケン・リュウ「波」にインスパイアされて書いたというだけあって、両者を足して2で割った仕上がりになっている。

古代文明の戦場跡を調査していたAI宇宙船が、ふとしたことから古代兵器を作動させてしまう。その一点から時空の崩壊が広がり、宇宙船は何世紀にも渡る逃走の旅に出ることになる。

ノヴェレットという短さに納めるために、大またぎで時間も文明もどんどん飛び越えていくハッタリ的な壮大さが好ましい。元ネタもそうだし、マルセクの「ウェディング・アルバム」なんかも彷彿させる。最後はまあ予定調和だが、それはそれ。

ShortStory

  • “Between Nine and Eleven” by Adam Roberts

Crises and Conflicts: Celebrating the First 10 Years of NewCon Press (English Edition)

Crises and Conflicts: Celebrating the First 10 Years of NewCon Press (English Edition)

  • 作者: Ian Whates,Adam Roberts,Allen Stroud,Christopher Nuttall,Una McCormack,Tade Thompson,Janet Edwards,Mercurio D. Rivera,Tim C. Taylor,Nik Abnett,Gavin Smith,Jo Zebedee,Michael Brookes
  • 出版社/メーカー: NewCon Press
  • 発売日: 2016/07/11
  • メディア: Kindle
  • この商品を含むブログを見る

ショートストーリィ部門は英国バカSF……もといハイ・コンセプトなSFの系譜を今に受け継ぐアダム・ロバーツの短篇。ニューコン・プレス10周年記念アンソロジー収録。

異星人トレフォイルと戦闘していた人類の宇宙艦隊。敵を追い詰めたつもりが、ガス惑星に隠されていた敵の秘密兵器によって大打撃を受ける。その兵器は空間内のある〈概念〉を破壊するという恐るべき力を秘めていたのだ……。

タイトルの時点で出落ち感満載だが、こんなネタが21世紀に許されるのか!ということで、昨年一番のインパクトがあったことは否めない。

こうして通して見てみると見事にスペオペばかりで、選者のセンスがばれてしまうな。

3/17 追記

小説関連の賞で、キャンベル新人賞を忘れてた。ここ2年で頭角を現した作家ということで、ここはマルカ・オールダーを挙げておきたい。 第1長篇Infomocracyについては、SFマガジン2017年2月号のNovel&ShortStory Reviewで取り上げているのでそちらをご覧ください。

Infomocracy: A Novel (The Centenal Cycle)

Infomocracy: A Novel (The Centenal Cycle)

2/27~3/11 SF情報

近刊情報

スコルジーのスペオペがなかなか面白そうなのだが、放っておいても訳されそうな気もするし……。あとPilot Xというのが古典SFっぽくて少し気になる。

ポピュラーサイエンスのノンフィクションだが、レナルズとクレスの書き下ろし短篇が入っているらしい。

書評

インタビュー

ジェフ・ヴァンダミアのAMA。

レナルズのAMA。

その他記事

中国SFは各方面で話題。

オクタヴィア・バトラーに関する豆知識。

バングラデシュのSFの現状。ベンガル語SFなんて永久に読む機会なさそう。

4月にNYでドクトロウとスノーデンが対談。てかスノーデンはアメリカに帰ってきて大丈夫なのか。

FiresideというウェブジンはGithubでサイトのソースを公開しているそうな。

2/13~25 SF情報

近刊情報

老舗ポッドキャストStarShipSofaの中の人がやっているアンソロジーのクラウドファンディング。ティドハーやリュウが入ってやや豪華になってきた。

書評

インタビュー

賞関連

新設されたパキスタンの短篇SF賞、サラム賞。

今年のネビュラ賞ノミネート。ダイバーシティ

その他記事

フィリップ・プルマンライラの冒険」の続篇が10月に出るとか。

ケンブリッジに英国初のSF研究センターが開設。

チャーチルが地球外生命に関する文章を残していたという話。