Prophet of Bones by Ted Kosmatka

テッド・コスマツカ*1については以前第1長編をボロクソにいったけれど、一作だけで判断するのもまずいだろうかと思い、第2長編にも手を出してみることにした。

Prophet of Bones

Prophet of Bones

要約

我々の歴史よりも早く放射性炭素年代測定の技術が生まれたことにより、地球の歴史は約6000年と判定された世界。進化論が否定される一方、教会の影響力は現在まで残り、人類の起源について神学的解釈と現代科学が直結するいびつな状況が生まれた。
生物学者のポールは強引なスカウトを受けてインドネシアのフローレス島での発掘チームに加わる。そこで発見された人骨は明らかに人類とは異なるものだった。直後、チームはインドネシア軍に強制退去させられ、難を逃れたポールは謎の襲撃者に片目を奪われながらも骨の一部を持ち出す。アメリカに戻ったポールは骨の正体を突き止めようと動き出すが、やがて彼を妨害する巨大な勢力の正体に気づき始める。
実在するフローレス原人の骨を元ネタにした生物学路線のテクノスリラー。前作に続き骨や遺伝子をめぐる専門知識はさすがといったところだが、SFとしてのインパクトにつながっていないのが残念。

感想

結論からいうと、「あ、もうこの作家追いかけなくてもいいかも……」と思った。前作にも感じたSFとしての魅力の薄さが改まってないうえに、ストーリーもいまひとつ退屈で、読むべきところが何もない。
困ったことに設定はなかなか魅力的だ。地球の歴史がわずか6000年というのはショッキングで、本当にそういう(この世界とは別の原理で構成されている)世界なのか、それとも主人公たちによって覆されるのだろうか等々想像せずにはいられない。*2また序盤、骨が専門の主人公から語られる該博な専門知識や、一見現代そっくりでありながら節々で宗教的イデオロギーによって歪んだ世界像を主人公の子供時代を通して見せる趣向には引き込まれた。
ところが主人公が謎を探り出すくだりになると、陰謀論やアクションシーンは山盛りになるのに、それまで構築してきた設定がどこにも生かされないというのはどういうことか。最後の最後まで引っ張ってようやく明かされる陰謀の正体なんて何の新味もないし、驚いたりショックを受けたりしているのは作中人物だけだ。
前作が「ジュラシック・パーク」の安物だとすると本作は「北京原人」くらいの水準なので、現代SFの読破に命を懸けている人でもなければ読まない方が無難だ。

*1:以前はコスマトカ表記にしていたが、こっちの方が原音に近いとかなんとか

*2:読み終わった後で気付いたが、6000年というのは炭素の半減期なので、炭素年代測定法に頼るあまりそういう結論になったということなのだろう。