ワールドコン75(1日目)

8/9〜13にかけてフィンランドヘルシンキで開催された第75回世界SF大会、通称ワールドコンに参加したので、その感想を綴ってみる。なお英語の本を読んでいるくせに筆者は英会話などはまったくダメなので、内容の正確さについては保証しない。

10:00 会場着・参加登録

参加登録は9時から始まっていたので、もっと早く着くつもりだったが、トラムの路線を乗り間違えてたりして10時半頃ようやく会場 Messukesukus ことヘルシンキ・エキスポ・コンベンションセンターに到着(トラムにはその後も延々乗り間違えるのだが、その話はここでは置いておく)。

登録は事前に印刷しておいたバーコードをスキャンして、すんなり終わった。ネームプレートやスーベニールブック、プログラム一覧など渡される。ちょっと嬉しかったのは、無料配布のアンソロジー Giants at the End of the World。フィニッシュ・ウィアードというくくりでフィンランドの現代作家の書いた短篇の英訳が載っている。ヨハンナ・シニサロ、エンミ・イタランタなど邦訳のある作家もちらほら。個人的に一番ぐっときたのは、ハンヌ・ライアニエミの今年結局出なかった長篇 Summerland の冒頭が載っているところだろうか。

本格的に企画が開始するのは午後からなので、それまでは正直何もすることがない。この後もこういう時間がしばしば発生したので、同行者がいたらよかったのにと思った。しょうがないのでソシャゲで時間を潰す。フィンランドプリペイドSIMはWifi並に早く、パケット量も上限なしとソシャゲにはぴったりだ。

13:00 ディーラーズルーム開場

展示およびディーラーズルームが開場したので、適当に流す。ちなみに正式にはディーラーズではなくトレードホールという名前になっていた。業者ばかりでなく個人販売もあるからということだろうか?よく分からない。打ちっ放しのスペースに机が並び、適度に空間が開けている感じは文フリに似ている。まだ展示者側も客側も閑散としていて、中国の科幻世界のスペースなどは過去号をだらっと並べてスペースに人がいないという状態でおいおいと思った。

出版社のコーナーで以前から発売予告されていたエンミ・イタランタ選のフィンランドSF/Fの英訳アンソロジー Never Stop を購入。先のGiants〜に比べると、これまで翻訳のなかった作家に焦点を当てているようである。なお会場限定だと思い込んでいたが、普通にKindle版が買えた(それも会期前から!)

Never Stop (English Edition)

Never Stop (English Edition)

もう一冊、ヤリ・コポネン(Jari Koponen)の World SF in Translation を購入した。コポネンはフィンランドでは古株のSFレビュアーで、非英語圏SFの収集に関心があるらしい。この本は原語から英語に翻訳されたSFのリファレンス本で、世界54カ国・著者1165名を扱っているという。2012年刊行だから新鮮な情報には期待できないがなかなか面白い。実用性があるかといわれると困るが、突然エルサルバドルSFやジンバブエSFの情報が必要になるかもしれないのが人生だ。

14:00 Nordic SF/F Nowパネル

パネリスト

※本来はウムラウトストローク記号を伴うが、入力が難しいので記号なしでご容赦いただきたい

ついにワールドコン初の企画である。会場外のパシラ図書館2階の講堂で開かれた。元の席数が少ないこともあるが、すぐ埋まって立ち見ができていた。 パネル企画は複数人による討論形式で、スライドなどはほぼ使われない。つまり話について行けないとほとんど理解できない。これには最後まで悩まされた。

内容としてはプラグラムにあった通り、北欧4国の近年のSF状況や代表作について各パネリストが解説を行った。おおむね自国市場の小ささやSFに対する関心の低さがネックになっているようだった。ダン・シモンズニール・スティーヴンスンに人気がなくて、リアリスティックな話ばかり求められているというのはつらかろう。ノルウェーには政府の本の買い上げ制度があるらしく(ツイッターで検閲とか書いちゃったが検閲があったらやばいだろう……)、「全部政府に買い取ってもらえばいいのでは?」とかネタにされていた。

それにしても全員非英語圏の住人なのに、英語でコミュニケーションしていて頭が下がる。フィンランドのMakelaはその中では割と苦手なようですぐ詰まっていたが、発音や聞き取りには問題ないようで、英語で思考するというのが難しいようだった。 デンマークのAhnはデンマークSFのアンソロジーSky Cityに作品が載っているらしい。これは読んでいるはずだが、あまり記憶に残っていない。

Sky City

Sky City

15:00 Opening Ceremony

15時からオープニングセレモニーだった。総合司会は作家のカレン・ロード。ロードはヒューゴー賞授賞式やマスカレードでも司会を務めていたが、落ち着いたよく通る声でナレーターとしても務まりそうだった。

進行は開会の挨拶に続き、伝統芸能の披露、アカペラグループの合唱、ゲスト・オブ・オナーの紹介、また合唱、ダンスと続く。ごく正直にいうと学芸会っぽいなーと思ったのだが、SFコンベンションにオリンピック開会式ばりのアトラクションを期待するのもおかしいと思い直した。よく見てみると手作りならではあたたかみを感じないでもない……。

合唱については、以前欧州のコンベンションを紹介しているFandom RoverブログのSwenconの記事で、北欧のコンベンションではこういうのがあるというのを読んでいたので、実際に体験できてちょっと嬉しかった。綺麗なコーラスにカエルの鳴き真似みたいな妙な音が混ぜてくるところが民族音楽らしい。

Fantastika 2016 – Swecon 2016 - Fandom rover

18:00 Anime and Manga for SF/F Fans(参加できず)

いざ企画に行こうとして、異様な長さの行列ができていることに気付いた。慌てて自分も並んだものの、入場が開始して自分から数人前のところで締め切られてしまい参加は叶わなかった。

後から知ったことだが、2階の会議室は収容人数が少なく、しかも立ち見を許可しない方針だったため熾烈な争いになっていたのである。この列競争は最後まで続き、3日目くらいからはついに最後尾札が登場して文化を感じた。しょうがないので展示ルームに行って、ボドゲに興じる人たちを観察して時間を潰した。

ちなみに、この企画で挙がった作品についてパネリストの一人エイダ・パーマーがTwitterに挙げてくれていた。

みんなオタクだなあ。