2016/6/6~6/11 SF情報

近刊情報

レナルズの秋の新刊、表紙絵はいいが、宇宙海賊ものか……。

書評

インタビュー

今週発売のInfomocracy、電子選挙ものということで生真面目なポリティカル・スリラーかと思っていたが、インタビュー読んで「日本も舞台の一つ」「東北の潰れたパチンコ屋のネオンのシーンから始まる」「ミシマという登場人物が出てくる」「日本刀が出てくる」というあたりに圧倒的なサイバーパンク感を覚えたので、暇を見つけて読みたい。あと、マルカ・オールダーはアーバン・ファンタジィ界の新鋭ダニエル・ホセ・オールダーの姉妹なんだとか。SFエリート兄妹。

賞関連

2015年のヒューゴー賞をめぐる一連の騒動を取材したドキュメンタリー映画。

英国幻想文学大賞の最終候補。ゼン・チョウとかが話題になってるんですかね(あまり興味なし)。

中国のSF賞新設の話題。国家公認SF作家ってカッコいいな!と思ったが、中国科学技術協会は民間組織ということであった。

その他記事

本職のAI研究者の選ぶシンギュラリティ関連本リスト。特筆したものはなし。RPOが入ってるのがちょっと。

GRRMがボルチモアのコンベンションから帰ってきてcon crudにかかったというので、con crudって何だと思ったら「コンベンションなど大勢の人間が一カ所に集まってやり取りすることで蔓延する病気」だそうな。これは京フェスで発生する「さわやの風土病」と同じものでは?

ニール・スティーヴンスンの最新作の映画化権が売れた。映画化したらさすがに翻訳も出るかな。

2016/5/30~6/4 SF情報

近刊情報

6月になったので新刊があれこれ。とりあえず年間傑作選の何冊かは買って、後は流れで。

書評

インタビュー

チャールズ・ストロスが宇宙開発関連のシンポジウムに登壇したときの記録。

例のクロウリー訳・世界初のSFについての対談。お相手はケリー・リンク

その他記事

ラジウム・エイジというサブジャンル(時代区分)があるのか。例によってオールディス先生の命名らしいが。

以前話題になっていた100年後に発表される作品シリーズにデイヴィッド・ミッチェルも参戦。

ブリン先生がちまちま集めたSF関連Twitterアカウント集。

上海のSFコンベンションのレポ。途中の写真に出てくる萌えキャラみたいのは何だ?と思ったらファンダムのマスコットらしい。

Redditで連載中の謎ホラー小説、ついにBBCニュース入り。

2016/5/23~28 SF情報

近刊情報

来年刊行だが、スコルジーとドクトロウの新作について。スコルジーの方はなかなか面白そう。毎度クラシックな娯楽SF路線だけどB級と思われるほど安っぽくない、みたいな微妙なラインを攻めてる気がする。

ソラリス・ブックスからはMagic the Gatheringのノンフィクションが刊行される。これも来年。

書評

インタビュー

パオロ・バチガルピのAMA(~だけど質問ある?)。具体的な新刊情報はシップブレイカーシリーズの続編ぐらい。

賞関連

ジョー・ウォルトンがヒューゴー賞のゴタゴタを尻目に遊び心で創設した賞。通常の投票数とは別に運だめし的な要素(RPGっぽい)が投票結果に影響する。

その他記事

ジョン・クロウリーが17世紀に書かれた薔薇十字団のテキスト『化学の結婚』を翻訳するという。それはいいのだが、同書を『フランケンシュタイン』に200年先立つ世界最初のSF小説だと言い出して批評家筋が困惑。

疑似なろう系異世界ファンタジー?

かえすがえすもSF Signalは偉大だった……。

ドリス・ピサーチアはニュー・ウェーブ期の作家だそうだが、全然知らぬ。バリントン・ベイリーが流行るような世の中なので、発掘する価値はあるかも?(ないかも)

2016/5/16~21 SF情報

近刊情報

ブライアン・トーマス・シュミット編のYAアンソロジー。面子が立派じゃん……と思ったら大体再録のもよう。

書評

インタビュー

アシュビーの新刊関連の書評・インタビューが多い。デイヴィッド・ニッケルと結婚してたの初めて知った。

ダニエル・ホセ・オールダーは名前は最近よく聞くがどんなもんか。主に記憶に残ってるのは昨年の世界幻想文学大賞のトロフィーの件(代々ラヴクラフトの胸像だったが人種差別を作中で書いていたことから批判が出てデザイン変更された)なのだけど。

TOC

賞関連

その他記事

筆名を使っていた作家リスト。K・J・パーカー=トム・ホルトだったのは本当に驚いた。

SFとジャーナリズムを架橋する新しいメディアだそうな。会員制なので内容まで見られず。

現代SF/FTの8つの部族について。ダミアン・ウォルターは結構適当こく奴なのでネタとして。

イーガンの新作の話で盛り上がるReddit民。早速逆転世界が引き合いに出されてるのは洋の東西を問わず。

2016/5/8~5/14 SF情報

近刊情報

ウィリアム・ギブスンがほめたことで人気になったとかいうテクノスリラー。

書評

今週発売のティドハーの新作レビューが多かった。既存の短篇をまとめて小説にしたのか。意識していた過去作品のうち、シマックは意外といえば意外。スミスは割と分かる。『完璧な夏の日』にヴォマクト博士も出てきたし。

TOC

年間傑作選も知らない作家がいっぱいだわ。ファンタジィ方面は特に。

賞関連

その他記事

ソーラーパンクは名前だけは聞くがまともな作品の形でまだ見たことがない。

GithubのAwesomeシリーズにSFが!

RedditのSFスレから『星を継ぐもの』、ハードSF、ループものなど。

ゲームの出てくる小説選。この手の奴にエンダーを入れるのはいい加減やめろ。

2016/5/1~5/7 SF情報

SF情報サイトSF Signalが更新停止してしまった。2003年から続いていたということなので、英米SFを読み始めてからこのかたずっとお世話になってきたことになる。今までありがとう。R.I.P.

しかしこうなると、近々のSF情報をざっくり把握する手段がなくなってしまってつらい。代替手段としてしばらく備忘録的にブログに収集したリンクをまとめておく(ブックマークだとまったく見なくなってしまうので)。これもそのうち面倒くさくなると思うが、それはその時また考えよう。

近刊情報

メジャーなところではティドハーの新作SF。新人ではエイダ・パーマーは面白いのだろうか。ジェイ・ポージイがちょい気になる。

書評

マルカ・オールダーのは時節柄というわけでもないだろうがサイバー選挙もの。続編も出るらしい。パーマーは評価は高いがあまり私の必要そうな本ではなさそう。この人はTor.comで水木しげるの追悼記事を書いていたのが印象に残っている。

インタビュー

USJの作者の人が好きなファンタシースターはオンラインじゃないやつ?

賞関連

その他記事

Kickstarterのやつはまだ参加してなかったので。

Ghost Fleet by P.W.Singer and August Cole

Ghost Fleet: A Novel of the Next World War

Ghost Fleet: A Novel of the Next World War

P・W・シンガーといえば大量の資料を用いて現代の戦争の諸問題をクローズアップした『戦争請負会社』や『ロボット兵士の戦争』といった名ノンフィクションで知られる人物である。その彼が今度は小説を、それも近未来を舞台にした軍事シミュレーション小説を書いたという。現実のミリタリーは門外漢もいいところだが、現代の戦争の第一人者が幻視する近未来の戦争とはどんなものだろうという野次馬根性を抑えられず、ちょっと読んでみたのであったがーー(この記事は読みかけの読書メモである)。

あらすじ

時は近未来。中東での汚い爆弾によるテロが石油の供給不安定を引き起こし、大国間には不穏な空気が漂っていた。中国では旧共産党指導部を新たに台頭した軍産エリートたちが追い落としたことで政権交代が行われたが、国内での燃料需要の増加はアメリカやロシアとの間に緊張を生み、やがてマリアナ海溝に眠る巨大なガス田が発見されたとき、ついに新指導部は一線を越える。

周到に用意されたサイバー空間や宇宙での攻撃は米軍の通信網を破壊し、間を置かず米軍基地への強襲や破壊工作が開始される。マラッカでの海賊掃討の帰途、ハワイ基地に寄港していた沿海域戦闘艦USSコロナドは間一髪破壊を免れたが、艦長は戦死。副長シモンズは艦長代理として炎上する基地を後にコロナドの逃避行を指揮する。

感想

想像以上にド直球の軍事スリラーだった。シモンズという仕事と家庭の間で悩む等身大の人物を中心人物に据えつつ、開戦前後の場面を転々としていかに戦争が多次元的に展開されているかをディティール細かに描いている。トム・クランシー風といわれたら納得してしまいそうな出来映えだ。

しかし戦争の新しい形を描いているとかなんとか、そういう感じは全然しない。いかにも絶体絶命からの逆転劇という筋書きもそうだし、沖縄基地爆撃のくだりでドーリットル空襲の再現だということを作中人物が口にしているが、状況自体がある種太平洋戦争の再現みたいな雰囲気がなきにしもあらず。ドローンも一応登場するが戦局を左右するようなわけではないし。

とはいえ、この作品の値打ちはストーリーラインではなく、現実の国際情勢やテクノロジーにそこそこ基づいたリアルな細部にあるのだろう。実際、ノンフィクション作品同様に作中の状況や兵器には豊富な脚注が添えられている……のだが、これらはその根拠となった資料や記事へのリンクが張ってあるだけだったりする。Kindleで読んでるとURL1つたどるのも大変なので、二言三言でいいから解説文を入れてほしいと切に思う。

あえてSFファンの目から見てみると、大使館員が体内に高感度センサーを埋め込んでパーティーで情報収集を図ったり、ハックしたスマートフォンの各種センサ情報をいくつも重ねて重要施設の内部を浮かび上がらせるとかいったところは、もうすっかりSFだなという感じだ。シンガーには未邦訳のサイバーセキュリティに関する著書があるので、この辺はお手のものだろう。とはいえ想像で書いている部分はやや凡庸さもあり、例えば上海交通大学の少女ハッカーが指輪型デバイスをひらひらさせながら米情報機関のセキュリティを突破するなんてのはあまり現実味を感じない。ドクトロウとかの方がまだ説得力ありそう。

米軍がハワイでボロ負けしたほんの序盤だけ読んだので、この後は表題通り老朽化した予備艦隊(ゴースト・フリート)を率いて中国軍に反撃する熱い展開が続くのだろうけど、正直ディティールを除けば仕事で読んでるミリタリーSFとそう変わらないので、いったんバチガルピを読むのに戻る。気が向いたら続きも読むかも。